本研究室の理念は、今日のセラミックス産業が抱える最も深刻な問題に正面から立ち向かい、その解決をとおしてセラミックス材料の地位向上に貢献することである。
これを可能にするには、視点を従来とは全く変える必要がある。我々は、コロンブスの卵的発想で種々の新しい評価法を開発し、これを武器に新しい切り口からの研究を進めている。
セラミックスは原料粉体を所望の形に成形し、それを高温で焼成して製造する。
セラミックスにおける今日の最大の問題は、強度が低くばらつくことである。
原因は、製造プロセスの中で入り込んだ、数は少ないが、大型(数十ミクロン)の欠陥である。
この大型欠陥が強度を支配してしまうからとされている。
このことはセラミックスを取り扱う人全てが想像していたが、
これまで誰もこれを正確に確認した者はいなかった。我々は新しい視点で評価するために、従来とは異なる評価法(観察法)を開発し、セラミックスの成形体やセラミックスの内部を観察して、
不良因子(欠陥)を定量的に調べることに世界で初めて成功した。
成形体では、粉体集合体や成形体を、粒子と近い屈折率の液体でしみこませ透明にすることである。これで、従来どうしてもわからなかった試料中の種々の構造欠陥が、容易に調べられる。成形体の中は予想をはるかに超えて不均質である。
同様に、セラミックスは薄くすると光が透ける。これにより、その内部構造を顕微鏡で調べると、種々の新しい情報が得られる。光がとおりにくければ、光源に赤外線を用いたり、X線CTを使うこともある。
このようにして得られた、不良因子の情報を製造プロセスにフィードバックし、
製造プロセスと不良因子発生の関係をより系統的ににリンクさせる事により、
セラミックス製造プロセスを、職人技(わざ)の世界から、技術へ、そして科学へと体系化し、セラミックス構造設計というさらに進んだレベルへステップアップさせるための基礎を築くのが、我々の研究の大きな目標である。
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