有機反応設計研究室

Laboratory of Organic Reaction Design and Synthesis

研究内容

当研究室で行われている研究について少し詳しく紹介します。

Objective of Our Research

☆脱石油時代を視野に入れた有機化合物の新しい相互変換法の開発
☆高度な環境調和型反応プロセスの開発
☆有機材料合成に寄与する新規有機反応中間体の合成
☆輸入に頼っている希土類元素を使用しない元素戦略を考慮した有機化合物合成
☆安い有機物質を用いた付加価値の高い有機物質合成

Organic Electron Transfer Reactions

電子移動型反応
環境調和型有機合成プロセス開発と有機機能物質合成)
本研究室では生体関連元素で安全である一方、還元力の大きい典型金属であるマグネシウムを電子移動剤として用いる反応や電子が試薬である有機電極反応を用い、固液不均一界面という特異な反応場を利用して、有機化合物の極性変換(電気的性質の反転)を行うことにより、従来の一般的な均一系有機合成法では発生しにくい、もしくは発生させることが著しく困難な反応活性種の発生法を探求し、現代反応の必須条件である環境保全、安全性、炭素循環、再資源化等の社会問題を考慮した新規でクリーンな有機合成反応プロセスの開発を試みています。


極性変換による新反応開発の概念図

Magnesium Promoted Reductive Coupling Reactions

金属マグネシウム還元反応
 金属マグネシウムを用いた代表的な有機合成反応としてはGrignard反応やピナコールカップリングなどが有名ですが、金属マグネシウムを還元剤として用い、極性変換を伴って通常導入できない官能基を導入する本研究室の手法とは大きく異なります。金属マグネシウムを還元試薬として用いた官能基導入反応としては1970年代に発ガン性のHMPAを溶媒とするシリル化反応が一部報告されていましたが、選択性、収率は必ずしも優れていませんでした。私達の研究室では1990年代の始め頃から金属マグネシウム還元反応によるアシル化反応やシリル化反応の報告を行っており、現在も金属マグネシウム還元反応は世界的にも行われている例はあまりありません。一方、サマリウムに代表される希土類元素や亜鉛を還元剤として用いる反応例は多いですが,亜鉛は還元できる基質が大きく限られ、希土類元素は高価です。希土類元素が輸入困難となった最近の状況に対処する国家的元素戦略を考える上でもマグネシウム還元反応の展開は極めて重要な課題なのです。


簡便なマグネシウム還元反応

Organic Electrosynthesis

有機電解合成
 有機電極反応においては、電子の授受により、陽極では酸化反応が、陰極では還元反応が起こります。有機電極反応により有機分子の構造を変換する手法では、 深刻な環境汚染をもたらす重金属酸化剤や特別な注意を要する還元剤を用いることなく、 「電子」というクリーンな試薬を用いて反応を行うことができます。有機電極反応は、環境保全の重要性が叫ばれる現代において 重要な有機合成化学のアプローチの一つです。有機電極反応により有機化合物の合成を行う手法が有機電解合成であり、日本においても数多くの優れた合成反応が開発されてきました。


電極還元反応セル


直流電源を用いた電極還元反応装置

Partially Fluorinated Organic Compounds and Trifluoroacetylation

部分フッ素化有機化合物とトリフルオロアセチル化反応
 含フッ素有機化合物は天然に存在するものは非常に少なく、ほとんどの場合、合成しなければ得ることはできませんが、その合成はフッ素の電気陰性度が非常に大きいことや炭素?フッ素結合のエネルギーが非常に大きいことなどの理由で、容易ではありません。これまで有機化合物へのフッ素の導入反応が数多く開発され、報告されています。その中でも中心となっているものはモノフッ素化反応とトリフルオロメチル化反応です。これにより多くの部分フッ素化有機化合物が合成されるようになりました。これらの反応では求核的な反応と求電子的な反応が共に知られ、多種多彩な反応が可能になっています。しかし、比較的容易に利用できるトリフルオロアセチル基はその求電子的な性質ゆえに求電子反応に限られていました。
 私達の研究室では、最近、この点に着目し、金属マグネシウム還元反応を利用することで、求核的なトリフルオロアセチル化反応と実質的に同等な反応ができることを明らかにし、これにより反応ステップ数を大きく削減して、今まで合成されたことがないトリフルオロアセチル基を有する新規化合物を数多く合成してきました。


電子移動でプラス(+)の性質をマイナス(-)の性質に変換する極性変換反応


Tetrahedron Lett., 2010, 51(5), 796-799

結果として、プラス(+)の性質の炭素に、プラス(+)の性質の炭素を結合することができ、求核的なトリフルオロアセチル化反応ができます。


Synlett, 2012, 23(3), 401-404

特に画期的な例として、メタ配向性の芳香族ケトンのパラ位に位置選択的にトリフルオロアセチル基を導入できることを明らかにしました。



卒業・修了学生の学位論文を紹介します。

令和2年度

修士論文
五十嵐 悠介  脱離基を有する桂皮酸エチル類と4-ビニルピリジンのマグネシウム還元カップリング反応
小林 大朗  桂皮アルデヒドのマグネシウム還元アシル化反応と二置換フランの合成
坂田 博斗  金属カルシウム還元による安息香酸イソプロピル類と塩化アセチルのカップリング反応

課題研究論文
張 嘉武   芳香族共役エステルと脂肪族共役エステルの非対称還元カップリング反応

令和元年度

修士論文
鄭 素華   2位にカルボニル基を有するベンゾフラン類のマグネシウム還元シリル化反応
田中 寿史  脱離基を有する桂皮酸エチル類のマグネシウム還元二重炭素-炭素結合形成反応

平成30年度

修士論文
長谷川 智也 エステルのβ位に脱離基を有する脂肪族共役エステルとアクリル酸メチルの
       マグネシウム還元カップリング反応      

平成29年度

博士論文
張 田原 マグネシウムからの電子移動による芳香族共役化合物の位置選択的カップリング反応に
     関する研究

修士論文
田原 正太 脱離基を有するスチレンのマグネシウム還元シリル化反応

課題研究論文
五十嵐 友紀 エステルのβ位に脱離基を持つ芳香族共役エステルの合成と還元シリル化反応に
       関する研究       

平成28年度

修士論文
金澤 信之祐 オルト位に脱離基を有する安息香酸エステルのマグネシウム還元反応
土門 千紗 エステルのβ位に脱離基を有する桂皮酸エチルとアクリル酸エステルの
      マグネシウム還元カップリング反応
中嶋 木乃美 アルケン炭素に脱離基を有するスチルベンのマグネシウム還元シリル化反応
吉澤 美沙紀 エステルβ位に脱離基を有する脂肪族共役エステルのマグネシウム還元シリル化反応

課題研究論文
倉持 圭佑 エステルのβ位にシリル基を有する桂皮酸エチルのマグネシウム還元炭素―炭素
      結合形成反応
鄭 素華 マグネシウム還元による多環及びヘテロ芳香族エステルのトリフルオロアセチル化反応

平成27年度

修士論文
野田 克哲 エステルのβ位に脱離基を有する桂皮酸エチルのマグネシウム還元シリル化反応

平成26年度

修士論文
張 田原 芳香族共役イノン類の三重結合の移動を伴うマグネシウム還元アシル化反応
安部 光弘 芳香族共役エステルの還元による選択的トリフルオロアセチル基導入反応の開発
鵜名山 俊 赤色に発光する熱活性化遅延蛍光材料の開発

課題研究論文
張 澤宇 マグネシウム還元法による4-ビニルピリジンのビニル基のシリル化反応
吉田 敬宏 2,3,6,7,10,11-ヘキサアミノトリフェニレンとジイミノサクシノニトリルの反応

平成25年度

修士論文
大河原 光 安息香酸エステルへの還元的二酸化炭素導入によるベンゾイルギ酸の合成
西山 侑太郎 4-ビニルピリジンのビニル基への還元的トリフルオロアセチル化反応

課題研究論文
内山 遼太郎 ベンゾイルアセチレン類への還元的シリル基導入法の開発

平成24年度

修士論文
木原 伸 マグネシウム金属還元による安息香酸エステルとトリフルオロ酢酸エチルの
     クロスカップリング反応
高野 淳 マグネシウム金属還元法による芳香族共役イノン類のシリル化反応

課題研究論文
清水 一行 還元的トリフルオロアセチル化反応による含フッ素芳香族γ ケトエステルの合成
楊 磊 芳香族α,β 不飽和ケトンの合成とその還元的β トリフルオロアセチル化反応

平成23年度

修士論文
謝 春超 マグネシウム金属還元トリフルオロアセチル化法を用いた2-トリフルオロメチルフラン類
     の合成
佐々木 健 マグネシウム金属還元による6-トリフルオロアセチルアズレン類の選択的合成法

平成22年度

博士論文
宮崎 岳志 電子移動型反応による高選択的環化反応に関する研究

修士論文
工藤 将士 マグネシウム金属還元を用いた含フッ素芳香族非対称アシロイン合成
村上 太郎 マグネシウム金属還元法による芳香族共役カルボニル化合物への選択的カルボニル基導入反応

課題研究論文
Wan Normayani Mg金属還元による安息香酸エチルのトリフルオロアセチル化反応

平成21年度

博士論文
峯山 健治 金属または電極からの電子移動型反応による有機機能性物質の創成に関する研究

修士論文
井口 鎮人  トリフルオロ酢酸-ジクロロメタン溶媒系を用いた桂皮酸エステル類の陽極酸化反応
清水 悠平  Mg金属還元によるクマリン類の炭素-トリフルオロアセチル化反応
本 田順也  Mg金属還元によるアズレンとα,β-不飽和ケトンとの高選択的クロスカップリング反応

課題研究論文
佐々木 健  Mg金属還元による安息香酸無水物,アクリル酸エチル,トリメチルクロロシラン
       の三成分結合形成反応

平成20年度

修士論文
尾崎 太郎 Mg金属還元によるベンゾフェノン類のトリフルオロアセチル化反応
長久保 佳祐 電子移動型反応によるトロポン類への位置選択的官能基導入法の開発
原田 愛子 2,3-ジシアノナフタレン類の高効率的新規合成法の開発と高機能性新規
      ナフタロシアニン誘導体の創製
久富 寿夫 電極還元法を用いる光学活性N-アルケニル-2-アシルプロリンの高立体および
      位置選択的分子内環化反応

課題研究論文
Dyana Zulkeflee  Mg金属還元によるフェニルアルキルケトンの芳香環へのフルオロアセチル化

平成19年度

修士論文
岩崎 美葵 電子移動型反応によるフラボン類のアシル化反応
尾塩 縣 エポキシ化天然ゴムの水素化
松沢 圭介 電子移動型反応による不飽和系の官能基変換反応
宮崎 岳志 Mg金属からの電子移動型二重炭素-アシル化反応による大環状化合物の新規合成法

課題研究論文
川村 淳也 金属Mg金属からの電子移動型反応によるベンザルアセトンの炭素-アシル化反応

平成18年度

博士論文
Kendrekar Pravinkumar Sunderrao 電極からの電子移動による新規炭素-炭素結合形成反応に
                  関する研究
松波 真人 新規フタロシアニン誘導体及びナフタロシアニン誘導体を含む大環状化合物の開発と
      その応用に関する研究

修士論文
加藤 卓也 ポリフルオロカルボン酸類を用いる新規含フッ素有機化合物の合成
加藤 義一 アセナフチレン誘導体及びアクリル酸エステル誘導体の
      ワンポット二重炭素-アシル化反応
外山 雅道 カリックスアレーンアルデヒドの炭素-炭素結合形成反応
永原 大輔 Mg金属還元によるトロポン類のアシル化反応
東野 正章 電極還元反応によるジヒドロフタル酸類の新規合成法の開発と有機合成への応用
山中 淑子 金属Mgを用いるケトエステル類の分子内環化反応における新規合成法
ウィヂアスチナ クリスチィナ 新規機能性フタロシアニン類の創製と挙動

課題研究論文
田邊 智大 金属Mgによる2 ベンザールシクロヘキサノンとトリアルキルクロルシランのクロスカップリング
      反応
西 緑  マグネシウム金属還元によるトロポンのシリル化反応

平成17年度

博士論文
内田 哲郎 マグネシウム金属を用いる電子移動型反応による多様な結合形成反応の開発とプロドラッグ合成に関する研究

修士論文
Iwan Setiawan 尿素誘導体の電極酸化反応を鍵段階とするヒドラジン誘導体の合成
溝口 隼 電極還元反応による無水安息香酸誘導体の炭素-アシル化反応
森本 智貴 金属Mgを用いたワンポットVicinal二重炭素アシル化反応

平成16年度

博士論文
山本 祥正 金属及び電極からの電子移動型反応による実践的炭素骨格形成反応に関する研究

修士論文
秋山 祥一 陽極酸化反応によるポリフルオロベンゾキノン類の新規合成法
中野 誠二 金属亜鉛を用いるワンポット三成分結合形成によるタンデム型環化反応
日置 裕二郎 アセチレンアルコール類の高選択的陽極酸化反応
米村 和晃 金属Mgからの電子移動型反応によるケトエステル類の分子内環化反応

課題研究論文
石沢 徹也 芳香族カルボニル基を持つカリックスアレーン誘導体の電子移動型還元反応
吉田 篤史 ブロモ置換基を持つ可溶性フタロシアニンの合成と挙動

平成15年度

博士論文
合田 哲史 電極還元反応による高選択的炭素-炭素結合形成反応の開発に関する研究

修士論文
小倉 良昭 キラル支持電解質を用いる陽極酸化反応によるエナンチオ選択的不斉合成
酒井 伸康 Mg金属からの電子移動型反応による高選択的タンデム型環化反応
間瀬口 雅司 電極還元反応を用いるベンゾへテロ環状化合物の新規合成法
松波 真人 新規機能性フタロシアニン誘導体の合成と機能評価
山本 詩子 電極還元反応を用いる高選択的炭素-アシル化及びカルボアルコキシ化反応

平成14年度

修士論文
内田 哲郎 新規多元素環状化合物の合成と挙動
桑原 丈史 金属Mgを用いる立体選択的脱離反応によるオレフィン合成
定井 芳樹 新規カリックスアレーン誘導体の合成と機能
島田 久嗣 金属Mgからの電子移動型反応による非対称ピナコールカップリング反応とその応用

平成13年度

博士論文
境 正浩 金属マグネシウムからの電子移動型反応による高選択的炭素-アシル化反応に関する研究
京田 誠 リン又はイオウ元素を持つ活性オレフィン類の電子移動型反応及び機能材料の合成と機能に
     関する研究

修士論文
酒井 学 金属Mgを用いる共役エノン類と1,3-ジケトン類の位置選択的二量化反応の開発と展開
佐々木 丈晴 新規多元素環状化合物の合成と挙動
高木 厚志 分子内架橋クラウンエーテル環をもつ新規フタロシアニン類の創製と機能開発
クンナタンリキットアパントリー 陽極酸化法を用いる高選択的有機物質変換法
丹波 孝一 2-置換ニトロベンゼン類の電極還元法による高選択的分子内環化反応
横山 貴道 金属Mgを用いたビニルホスホネート類の高選択的炭素結合形成反応の開発と展開

課題研究論文
山田 幸司 電極還元反応による含窒素非共役エノン類及びイノン類の分子内環化反応

平成12年度

博士論文
伊藤 光太郎 陽極酸化反応からの特異な電子欠損型活性種を用いた 高選択的有機分子変換反応に関する研究
喜多 圭郎 電子移動型還元反応による活性反応種の生成・制御と有機合成への 応用に関する研究

修士論文
松本 武志 ビニルスルホン及びスルホキシド誘導体への電子移動型反応による高選択的脱離反応
山本 祥正 スチルベン類への電子移動反応における活性種の生成・制御とカルボニル化合物との
      新規カップリング反応
理崎 綾  Mg金属を用いた電子移動型反応による2,3-ジヒドロフラン類のワンポット合成

平成11年度

修士論文
神戸 修巳 金属ハロゲン化物存在下でのアセチレン類の陽極酸化反応と有機合成への応用
合田 哲史 電極還元法を用いる炭素-炭素結合形成反応
柴田 敏秀 Mg金属を用いたクマリン誘導体の炭素-アシル化及びシリル化反応とその立体化学の検討
中川 次郎 Mg-金属を用いる活性オレフィン類の炭素結合形成反応と有機合成への応用
本間 秀樹 2-置換-3-クロロテトラヒドロフラン誘導体の電極還元反応における環開裂反応の
      立体化学

課題研究論文
小竹 左知 エノールエステルの陽極酸化反応を鍵段階に用いる2-アリールシクロヘキサノン類の
      新規合成法

平成10年度

修士論文
飯竹 健一郎 電極還元反応によるgem-トリクロロ化合物とカルボニル化合物とのクロスカップリング反応
川野 誠司 電子移動型反応による芳香族オレフィン、シリルクロライド及びカルボニル化合物の高選択的
      ワンポット三成分結合反応
高坂 明宏 活性亜鉛を用いるビニルピリジン類、ヨウ化アルキル及びカルボニル化合物の
      位置選択的ワンポット三成分結合反応
境 正浩  電子移動型反応による芳香族カルボニル化合物および桂皮酸誘導体の炭素-アシル化反応
瀬川 唯  金属マグネシウムを用いる芳香族イミン誘導体の炭素-シリル化および炭素-アシル化反応
渡辺 政光 金属マグネシウムを用いるアルコール類およびα,β-不飽和ケトン類の
      高選択的シリル化反応

課題研究論文
大嶌 崇司 ピリジンカルボン酸類の電極還元反応

平成9年度

修士論文
伊藤 光太郎 陽極酸化反応を用いる精密有機合成
澤田 学  電極およびMg金属上での電子移動型反応によるクロス-カップリング反応と
      その立体化学的考察