研究内容・教育方針

 

Research Contents / Educational Policy

研究概要

 日本は、世界でも類をみない高齢社会を迎えており、国民が健康で安心して暮らせる社会の実現が課題となっています。そのため、ナノテクノロジーが関わるバイオ・医療分野 (ナノバイオ分野) において、細胞機能へ効果的かつ非侵襲に働きかける革新的材料開発が火急の課題です。

 弊研究室では、細胞機能制御テクノロジーの構築を目指した「ナノバイオ材料の創製」に関する研究を推進しております。特に、生体に類似な穏和な条件でナノバイオセラミックスを合成し、高次構造形成と表面・界面制御によって、細胞または生体組織へ積極的に働き掛ける技術を開発しております。その研究テーマ概要を以下の図に示します。ナノバイオ材料分野を革新し、“日本の超少子高齢社会をより良く豊かにする信念”をもち、物質材料工学研究に日々邁進しております。
 日本には、発想を転換すれば、企業はじめ学-産-官による技術革新力が多分にあると信じております。引き続き「バイオセラミックスと工学」に関する教育・研究に全力を尽くし、バイオ・医療産業の成長へ少しでも貢献する所存です。

 
 
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研究概要動画
(夢ナビトーク)

学生による研究内容紹介動画
(長岡技術科学大学WEBオープンキャンパス2020)

研究テーマ

1.バイオミネラルを陵駕するナノ規則性素材の創製

 
 バイオミネラルとは生体内に存在する硬組織であり,骨や歯,魚類の鱗,珪藻の被殻などがあります。バイオミネラルを構成する無機成分として,水酸アパタイト,炭酸カルシウム,シュウ酸カルシウム,リン酸カルシウム,酸化鉄,シリカがあります。バイオミネラルには糖やタンパク質などの有機物が存在しています。これらの有機物によって無機結晶の成長が巧みに制御され,その結果として,有機物と無機物が複合したバイオミネラルとなり,その機能は無機と有機の各ユニットが規則的に織りなすナノ構造によって発現します。俯瞰すると,生物は,常温,常圧,中性領域において,規則ナノ構造,及び,それを基礎構成単位としたマクロ組織体を合成し,複雑な階層組織構造を構築しています。このようなバイオミネラルの生成過程をバイオミネラリゼーションと呼びます。
 当研究室では,有機物を起点としたボトムアップ型テクノロジーによる規則構造体の形成を目的とし,核形成,核成長をポリマーの会合構造により制御し,ナノメートルオーダーの無機と有機から成る規則構造体をについて研究し,ナノバイオマテリアルの開発へ展開しております。最近では,ポリイミドをラビング処理して,その表面でコラーゲンフィブリルを一軸に配列させる技術を確立し,水酸アパタイトを複合させることに成功しています.
 

(2021時点:代表論文1-1) Yadong Chai; Mitsuhiro Okuda; Mari Miyata; Zizhen Liu; Motohiro Tagaya, “Rubbing-Assisted Approach to Highly-Oriented Collagen Fibril Arrays for Calcium Phosphate Precipitation.” Materials Chemistry Frontiers, 5, 3936–3948 (2021).
(2021時点:代表論文1-2) Yadong Chai; Yuri Maruko; Zizhen Liu; Motohiro Tagaya, “Design of Oriented Mesoporous Silica Films for Guiding Protein Adsorption States.” Journal of Materials Chemistry B, 9(8), 2054–2065 (2021).
(2021時点:代表論文1-3) Yadong Chai; Tadashi Yamaguchi; Motohiro Tagaya, “Fabrication of Phospholipid Vesicle-interacted Calcium Phosphate Films with Sterilization Stability.” Crystal Growth & Design, 17 (9), 4977−4983 (2017).
 
2.光機能バイオセラミックスの創製と細胞標識剤への展開

 
 バイオ・医療品市場の根幹的役割を担う素材の一つにバイオセラミックスがあります.当研究室では,湿式条件下でバイオセラミックスのナノ粒子・ナノ多孔体を合成して形状・性状を制御する研究を発端とし,その光機能化について推進してきました.細胞機能を制御する光機能バイオセラミックス粒子の創製によって当該分野の飛躍的な進展を狙っています.例えば,バイオイメージング技術においては,特定の細胞を安全・高感度に映し出す材料の創製が重要です.これまでに,有機色素や量子ドットなどが提案されてきましたが,生体安全性や耐光性に問題がありました.そのため,生体安全性が高く微小がん部位を安定にイメージングできる材料開発が重要となります.
 当研究室では,生体の硬組織などに含まれる無機成分であるリン酸カルシウム系化合物の合成・構造制御および光機能化について研究推進し,その表面へ細胞と特異結合する分子を修飾し,粒子形状・性状と細胞動態の関係を解明してきました.最近では,無機/有機複合化技術に基づいて光機能リン酸カルシウム系化合物の構造を制御し,リン酸カルシウム系では極めて高い蛍光量子収率が得られています.さらに,当該粒子の多層構造形成も実現しており,光機能化の概念が変革するものと期待しています.
 

(2021時点:代表論文2-1) Iori Yamada; Daichi Noda; Kenji Shinozaki; Tania Guadalupe Peaflor Galindo; Motohiro Tagay, “Synthesis of Luminescent Eu(III)-doped Octacalcium Phosphate Particles Hybridized with Succinate ion and Their Reactive Behavior in Simulated Body Fluid.” Crystal Growth & Design, 21(4), 2005–2018 (2021).
(2021時点:代表論文2-2) Takuya Kataoka, Sadaki Samitsu, Mitsuhiro Okuda, Daisuke Kawagoe, Motohiro Tagaya, “Highly-luminescent Hydroxyapatite Nanoparticles Hybridized with Citric Acid for Their Bifunctional Cell-labeling and Cytostatic Suppression Properties.” ACS Applied Nano Materials, 3(1), 241−256 (2020).
(2021時点:代表論文2-3) Takuya Kataoka; Shigeaki Abe; Motohiro Tagaya, “Surface-engineered Design of Efficient Luminescent Europium(III) Complex-based Hydroxyapatite Nanocrystals for Rapid HeLa Cancer Cell Imaging” ACS Applied Materials & Interfaces, 11(9), 8915−8927 (2019).
 
3.生体親和性を発現するバイオセラミック表面特性の計測と解明

 
 バイオセラミックスを体内へ埋入すると,生体内部において,細胞はバイオセラミックス表面に吸着したタンパク層を介して相互作用し,生体反応を引き起こし,生体組織形成が生じると考えられています.すなわち,生体親和性の高いバイオセラミックス創製のためには,細胞とバイオセラミックスの間に形成される界面層を計測して解明することが不可欠です.
 当研究室では長きにわたり「(I) バイオセラミックス表面設計」「(II) タンパク質による表面改質」「(III)細胞接着に関する研究」を推進し,各 (I)~(III) の 現象を明らかにしてきました.しかし,液中界面領域における一連の関係性が未解明な状況です.そこで,当研究室では,細胞とバイオセラミックスの界面現象を解明する研究を進めております.特に,生体組織が関わる液中ナノスケール界面に着目した研究を展開しています.このような界面計測研究を通じて「生体親和性を発現するバイオセラミック表面特性」が解明され,細胞機能を活性化させるバイオセラミックス創製指針へ応用できると考えています.今後の研究推進によって,“Nanobioceramic-based Interactions”の意義と概念が深化し,バイオセラミックスから細胞へ働き掛ける現象が解明されるものと期待しています.特に,当研究室で保有するQCM-D (Quartz Crystal Microbalance with Dissipation) 装置におけるDissipation解析は,様々なバイオ計測へ応用でき,液中での生体高分子の自己組織化過程をはじめ接合界面構造の計測・解明へ展開できるものと期待しています.
 

(2021時点:代表論文3-1) Shota Yamada; Takaki Kobashi, Motohiro Tagaya, “Control of Hydration Layer States on Phosphorus-containing Mesoporous Silica Films and Their Reactivity Evaluation with Biological Fluid.” Journal of Materials Chemistry B, 9(8), 1896–1907 (2021).
(2021時点:代表論文3-2) Shota Yamada, Satoshi Motozuka, Motohiro Tagaya, “Synthesis of Nanostructured Silica/Hydroxyapatite Hybrid Particles Containing Amphiphilic Triblock Copolymer for Effectively Controlling Hydration Layer Structures with Cytocompatibility.” Journal of Materials Chemistry B, 8, 1524–1537 (2020).
(2021時点:代表論文3-3) Tania Guadalupe Peñaflor Galindo, Motohiro Tagaya, “Interfacial Effect of Hydration Structures of Hydroxyapatite Nanoparticle Films on Protein Adsorption and Cell Adhesion States.” ACS Applied Bio Materials, 2(12), 5559−5567 (2019).
 
4.その他

 

教育方針

 
学生自身がプロフェッショナルに成る意識を持ちながら日々の勉学・研究に励み、輝いた姿で卒業・修了することを楽しみに教育に専心しております。さらに、学生時代に多くの経験を積み、研究者・技術者として立派に巣立つ基盤を固めるべく育成しております。そして、学生が長岡技術科学大学を修了して社会で大いに活躍できるように、様々な環境や場を構築し、弊学故の技学教育に邁進しております。

所属学協会:
  • 日本セラミックス協会 (生体関連材料部会)
  • 日本化学会 (コロイドおよび界面化学部会)
  • 日本無機リン化学会
  • 日本バイオマテリアル学会 (北信越若手研究会)
  • 光化学協会
  • DV-Xα研究協会 (常任幹事)
  • 日本材料科学会
  • 無機マテリアル学会

国立大学法人 長岡技術科学大学
大学院工学研究科 工学専攻
物質生物工学分野 生体環境工学講座
 

准教授

Associate Proffeser

多賀谷 基博

Motohiro TAGAYA

国立大学法人

長岡技術科学大学

大学院工学研究科 工学専攻
物質生物工学分野 生体環境工学講座
 
〒940-2188

新潟県長岡市上富岡町1603-1

 教員居室: 物質・材料1号棟 525室
 学生居室(1)/実験室(1):博士1号棟554室 
 学生居室(2)/実験室(2):博士1号棟555室
 学生居室(3):実験実習1号棟116室
 実験室(3):実験実習1号棟103室
 

Contact

TEL : 0258-47-9345
E-mail: tagaya(at)mst.nagaokaut.ac.jp
((at)は@です)